声だけでなく、その人全体を観察する
高音が出ない。
喉が締まる。
呼吸が止まる。
レッスンでは、そういう悩みをよく聞きます。
もちろん、実際に喉が締まっていたり、呼吸が浅くなっていたりすることはあります。
けれど私は、そういうとき、喉や呼吸だけを観察しているわけではありません。
その人が、どんなふうに話すのか。
どこで言葉を置くのか。
何を大切にしているのか。
どこで遠慮するのか。
そういうところを、私はかなり観察しています。
長くレッスンをしていると、声の問題は、声だけの問題ではないと感じることが多くあります。
たとえば、すごく大切に歌いたい部分ほど、そっと扱ってしまう方がいます。
強く出したいわけではない。雑にしたいわけでもない。
むしろ大切だからこそ、丁寧に、壊さないように、触れるように歌おうとする。
でも、その「そっと」が、息の勢いを弱くしてしまうことがあります。
声を前に運ぶ力が足りなくなって、結果として高音で苦しくなったり、喉が締まりやすくなったりするのです。
逆のこともあります。
歌いたい部分に気持ちが集まりすぎて、その感動のまま歌おうとする方もいます。
ここを届けたい。ここが大事だ。
そう思うほど、そこにエネルギーが溜まっていく。
すると今度は、そのエネルギーをそのまま声に乗せようとして、力みになります。
私は、こういうことがレッスンの中でよく起きると感じています。
だから「もっと息を流しましょう」「喉を締めないようにしましょう」と言うだけでは足りないことがあります。
その人が何を大切にして、どう扱おうとしているのか。どこでそっとしすぎるのか。どこで思いが強くなりすぎるのか。
そこが見えてこないと、曲の中ではまた同じことが起きやすいからです。
日本人には、大切なものほど強く扱わず、そっと扱おうとする感覚が比較的よくあるように思います。
それは繊細さでもあり、丁寧さでもあります。
ただ、歌になると、その感覚が呼吸の止まりや、声のブレ、喉の締まりにつながることがあります。
だから私は、姿勢や呼吸、発声だけでなく、その人の話し方や性格、情緒の動きまで含めて観察しています。
声は、その人の身体だけでなく、その人の感覚の使い方まで表すものだと思っているからです。
同じ「高音が苦しい」という悩みでも、必要な整理は人によって違います。
身体の使い方を見直した方がよい方もいれば、呼吸の流れを整えた方がよい方もいます。
また、声をそっと扱いすぎる感覚に気づくことが必要な方もいれば、歌いたい気持ちが力みに変わっていることを整理した方が変化しやすい方もいます。
声だけを部分的に直すのではなく、その人全体を観察しながら整えていく。
F-COMMUNITYでは、そういうことを大切にしています。